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パリのちいさなオーケストラ

男女差別をなくすべきだとか、平等とかいうが、現実はまだまだ世の中が掲げるようにはなっていない。世界的にみても、女性の活躍が目覚ましいと言ってもオーケストラの女性指揮者はまだ6パーセント!  指揮者を目指す少女の夢への挑戦は事実だけに心を打つ!

 世界的な指揮者チェリビダッケに見出され、少しづつ道が見え、指揮者の登竜門としても知られているコンクールにも挑戦、そこに行くまでは、見えない境界線すなわち人種的な差別や、階級差別そして、女性である事でいくつもの壁にぶっかる。例えば主人公のザイアはパリ市内の名門音楽院に最終学年で編入を認められて指揮者を目指すが、クラスでは名士の息子や、高級楽器を持つ生徒たちから嫌がらせや中傷などは日常茶飯事。やっとの思いで双子のチェロ奏者を目指す妹とともにエリートの生徒たちや移民の多いパリ近郊の地元の音楽仲間を集めてこの映画の原題「ディヴェルティメント」と言うオーケストラを結成する。

 人との出会いの大切さは、チェリビダッケとの出会いのエピソードでもわかるが、その逆に、コンクールに出た演奏者が審査員ほとんどが最高だと言ったのに「まだ早い」と一人の反対により落選という怖さも。

 主要なキャストは猛特訓で音楽を習得し、それ以外の配役は現役音楽家をキャスティングしているので、演奏シーンは実に自然でスムーズ。クラシックの名曲の数々のライブ感が味わえる。

 この映画の主人公ザイア・ジウアニが創立したディヴェルティメント・オーケストラは、現在団員70名で活躍中。

「タイミングとリズムは人生そのもの」「音楽は人生、人生は音楽」「金がない分クリエイティブだ」とチャーミングなセリフもいい。

『パリのちいさなオーケストラ』

9月20日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開

監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール
出演:ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ
2022年/フランス/フランス語/114分/カラー/ビスタサイズ/原題:Divertimento/映倫区分:PG-12/配給:アット エンタテインメント 

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