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「首」

今年カンヌ国際映画祭で話題になった北野武監督、19本目にあたる新作は、「本能寺の変」を題材にした壮大な戦国スペクタクル作品。歴史物と言うと、眉間にシワを寄せそうだが、笑いとバイオレンスがたっぷり詰まったびっくりのお話に、たまげるムキもいるだろう。

時は、戦国時代。明智光秀が謀反を起こし、君主・織田信長を襲撃した事件の、数年前の頃からスタート。天下統一を目指しいてた信長が、毛利軍、武田軍、上杉軍さらに京都の寺社勢力と、攻防を繰り広げていた。負けたものは、どんどん首を刎ねられながら。
そんな中、信長の家臣・荒木村重が姿を消してしまう。信長は、家臣の明智光秀や、羽紫秀吉(後の豊臣秀吉)に荒木の捜索命令を出す。秀吉は、この騒動に乗って信長と光秀を陥れ、天下取りを狙っていた。それぞれの立場の武士たちの意外な真相と、渦巻く欲と欲のぶつかり合いに裏切り。さらに嫉妬。壮絶な世界が繰り広げられる。

配役は、ビートたけし名義で北野武監督自ら羽柴秀吉役。織田信長を加瀬亮、明智光秀を西島秀俊、黒田官兵衛は浅野忠信、秀吉の弟・羽柴秀長を大森南朋、秀吉に憧れる農民・難波茂助を中村獅童、千利休に岸部一徳。他に六平直政、大竹まこと、津田寛治、寛一郎、小林薫、など豪華絢爛な顔ぶれ。しかも、男ばかり。

「ビートたけしは、日本映画に爆笑を詰め込んだ。そのギャグのアイディアは芸術だ」さらに「北野作品は、”男”を描いて強烈である。男のどれもがもがいている。男むき出しの男映画。ユーモアも激しい」とは淀川長治さんが、28、9年前におっしゃっていた言葉。現在も、決してぶれず、男たちの生き様が見事に描かれている。
歴史嫌いが歴史好きになったり、歴史のイメージが覆されたりするので、固定観念を捨てて見るべき作品。
かつて、シェークスピアがリチャード三世を悪者に書き上げ、イメージづけた例もあるように、作家が歴史上の人物像を自由に生み出す面白さを北野武監督もユニークに見せてくれる。書いた人の勝ち?!  それにしても、見る側もかなりのパワーが必要。

2023年製作 131分 R15+  11月23日公開

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