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お母さんが一緒

 幾つになっても、親子、兄弟のしがらみはあるものだ。万葉の時代では、この言葉は悪い意味ではなく良い意味でも使われていたとか。さて、この映画の三姉妹が繰り広げる言葉合戦は「兄弟は他人の始まり」か「血は水より濃い」なのか、家族間のアルアルがリアルに繰り広げられる。

 母親を連れて温泉地にやってきた三姉妹。側から見るとかしましい三姉妹。しかし、長女・弥生(江口のりこ)は美人姉妹と言われている二人の妹、次女・愛美(内田ちか)と三女・清美( 古河琴音)たちにコンプレックスがある。一方、次女は優等生の長女といつも比べられる事が嫌。三女は姉二人を冷めた目で観察しマイペース。いつも、褒めてくれない母親への愚痴が彼女たちの共通だが、それがエスカレートしてとうとう過去の色々なことも持ち出し言い争いバトルに発展。そこに、三女の恋人も現れますますややっこしいことに。

 メガフォンは、「ハッシュ!」「ぐるりのこと」「恋人たち」の橋口亮輔監督。「恋人たち」からは9年ぶりの長編作。ペヤンヌマキが2015年に発表した舞台劇を橋口監督が脚色。
 出演は、江口のりこ、内田慈、古河琴音、青山フォール勝ち(ネルソンズ)といった個性派たち。セリフの一つ一つのやり取りのテンポが見事だ。

「親しき中にも礼儀あり」「触らぬ神に祟りなし」などの言葉が頭にどんどん浮かんでくる。そうそう、どんなに親しくても、言ってはいけない触れてはならないこともあるのかなー。とはいえ、禁句や文句をたっぷり放っても、ある言葉が奇跡を生み出したちまち和み、家族っていいなと思わせてくれる。あの言葉、大事なのですョ!

『お母さんが一緒』

7月12日より新宿ピカデリーほか全国公開

原作・脚本:ペヤンヌマキ
監督・脚色:橋口亮輔(『ぐるりのこと。』『恋人たち』)
出演:江口のりこ 内田慈 古川琴音 青山フォール勝ち(ネルソンズ)
配給:クロックワークス
製作:松竹ブロードキャスティング
上映時間:106分
©2024松竹ブロードキャスティング