戦場での人間の極限をあからさまに描いた「野火」(14)の塚本晋也監督が、戦後まもなくの混乱期の闇市を舞台に心に傷をおいながらも生きる人々を赤裸々に描いた作品。NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で溌剌としたヒロインを演じている趣里が健気だが妖しい魅力を発する女を演じその存在感は見事に昭和の女!
戦争で、夫と子供を亡くし半焼けになった小さな居酒屋で女(趣里)が一人で暮らしている。そこに、生活のために体を売ることを斡旋する男(利重剛)が現れ、言われるままに日々やり過ごしていた。そんな時、居酒屋に食べ物を盗みに、少年(塚尾桜雅)が入り込んでくる。少年は空襲で家族を亡くしていた。そのうちに少年はここに居ついてしまう。そこに復員したばかりの青年(河野宏紀)が女を買いに来るが、実はお金がない。この男もめげずに通いいつしか他人同士が家族ごっこのように。しかし、男はある目的が。
少年は、闇市でテキ屋(森山未来)の男から仕事を貰って、その仕事の内容も知らず旅に出る。心配する女を置いて。
戦争が生み出した様々な後遺症が鬱積されたような状態。戦いの時だけが戦争ではない。終わった後、立ち上がれない人々もいる。しかし、この映画の少年は、殴られても蹴飛ばされても食いつき自分の働き口を見つけ出す。そんな少年たちが、日本を建て直す逞しい原動力のパワーになったんだろう。
戦争はあってはいけないとつくづく考えさせられる。
少年孤児役の塚尾桜雅君の顔の演技が物凄くいい!
2023年製作 95分 11月25日ユーロスペースほか全国順次公開
配給:新日本映画社
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