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身代わり忠臣蔵

戦前戦後合わせて80作品以上作られている「忠臣蔵」。ほとんどの主役は大石内蔵助だが、今回の主役は、嫌われ者の吉良上野介!

映画「超高速! 参勤交代」や「引っ越し大名」といったコメディ時代劇を生み出した脚本家・土橋章宏による同名小説の映画化。時代劇であってもいつも身近なテーマが笑いの中にピリっと効いてる作風は今回も全開。

江戸幕府の高家旗本・吉良家の当主は、周囲からも嫌われる根っからのパワハラ気質。その陰湿ないじめに耐えかねた赤穂藩主が、江戸城内で吉良上野介を斬りつけたのは有名な話。当然藩主の浅野内匠頭は切腹となった。が、斬られた吉良も逃げ傷で瀕死の状態に陥っていた。しかも逃げて死んでは武士の恥、お家取り潰しになるやもしれぬ。そこで一族の大ピンチを救うために上野介の側近斎藤宮内の提案により、かつて兄・上野介から家を追い出され、路頭に迷って金ナシのなまぐさ坊主をしていた弟の吉良孝証に金をチラつかせて身代わりを頼み込む。兄にそっくりの風貌とはいえ、全く性格の違う孝証。吉良家に仕える気の優しい女中・桔梗が身の回りのお世話をしてくれると言うので、彼女に恋い焦がれる孝証は、幕府を欺くために大胆な芝居を打つことに。
一方、切腹した赤穂藩主の部下、大石内蔵助は、仇討ちの機会を伺っているように見えたが、ひょんなところで孝証と意気投合。果たして、討ち入りはどうなるのか。

全く違う性格の吉良兄弟の二役を演じるのは、ムロツヨシ。傲慢な殿も、生臭坊主も実に身軽に演じ分けている。生臭坊主時代に川で溺れているところを助けてくれたのが大石内蔵助。演じているのは、永山瑛太。凛々しくカッコいい。
明るく利発な桔梗は川口春奈。実に可愛らしい。
孝証を吉良上野介の身代わりミッションにと発案した斎藤宮内は、林遣都。孝証との小気味いいテンポあるやりとりが面白い。
吉良家の荒っぽい剣客・清水一学に寛一郎。吉良家の門番・堀江半右衛門は本多力。吉良家に忠誠心を持っている加藤太右衛門に板垣端生。
浅野内匠頭に尾上右近。 優柔不断な内蔵助を優しく見守る妻大石りくは野波麻帆。
剣豪・堀部安兵衛は、森崎ウィン。忠誠心が人一倍強く大石を困らせることもある原惣右衛門に星田英利。冷静沈着な片岡源五右衛門は廣瀬智紀。赤穂藩の仇討ち一派の浪士・奥田孫太夫は濱津隆之。吉良仇討ちの若い浪士・岡野金右衛門は野村康太。赤穂仇討ちの若手浪士・間十次郎は入江甚儀。将軍に仕え幕府の裏を牛耳る柳沢吉保は柄本明。江戸幕府代五代将軍・徳川綱吉に北村一輝。
江戸唯一の花魁・高尾太夫は橋本マナミ。妖艶な遊女・春凧は加藤小夏といった豪華な顔ぶれ。
メガホンを撮ったのは、「花影 」(2008)「チア⭐︎ダン~女子高校生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~」(17) 「兄に愛されすぎて困っています」(17)「ニセコイ」(18)「かぐや姫は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦」(19)「総理の夫」(21)などの河合勇人監督。

一人二役を見事にこなすムロツヨシさんのうまさと、ユニークな展開、現代ならではの表現にビックリ!! 
時代劇が苦手な人でも、十分楽しめますぞ。

2024年製作 /119分 /G /日本
配給 東映
2024年2月9日( 金)より公開