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PERFECT DAYS

2023年、第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門男優賞で役所広司さんが受賞した話題の作品。

ホウキの掃く音で目覚め、自動販売機のコーヒーを飲んで車に乗って仕事場へ。毎日淡々とルーティンのように生活する平山の仕事は、トイレの清掃員。数カ所の渋谷のトイレを人の邪魔にならないようにさりげなくサッと身をかわしながら手際良く清掃している。
仕事が終わると、帰りに行きつけの居酒屋で一杯やり、気持ちよさそうに銭湯でひと風呂浴びる。コインランドリーに洗濯をしに行った日には、その向かいのスナックに寄る。
趣味は実生の小さな木を育てたり、カメラで木々の写真を撮影したり、古本屋で買ってきた本を読書すること。そんなある日、女性が訪ねてくる。そこから少しづつ彼の過去もわかってくる。

静かに毎日を過ごす男のちょっとした安らぎやちょっとした人との触れ合いがドキュメンタリーのように綴られる。

主役の平山を演じている役所広司の背中から男の哀愁がにじみ出ている。ラストの長回しの顔の表情も見事。
車で流すカセットテープは1960年代のオーティス・レディングの「ドック・オブ・ベイ」やヴァン・モリソン、ニーナ・シモンなどニクイ選曲。特にスナックのママを演じた石川さゆりの歌う「朝日の当たる家」は実にいい雰囲気だ。後にギターはあがた森魚と知ってなおビックリ。もう一度見なくては!

監督のヴィム・ヴンダースの77年のクライムサスペンス「アメリカの友人」では、一人の男の哀れな人生を描いて「映画通の監督ですね」と淀川長治さん。85年の小津安二郎監督へのオマージュを綴ったドキュメンタリー映画「東京画」では、「芸術の心くばりの美しさに感激」とも。今回のこの作品どう評するか想像してみると声が聞こえてきそう。

『PERFECT DAYS』

監督 ヴィム・ヴェンダース
脚本 ヴィム・ヴェンダース 、高崎卓馬
製作 柳井康治
出演 役所広司 柄本時生 中野有紗 アオイヤマダ 麻生祐未 石川さゆり 田中泯 三浦友和 
製作 MASTER MIND  配給 : ビターズ・エンド
2023/日本/カラー/DCP/5.1ch/スタンダード/124分
©️ 2023 MASTER MIND Ltd,

12月22日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー